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 帰りに西の空を見たら、真っ赤な三日月が沈んでいくのが見えました。



 そんな真冬に触発されて、小話でも。







 


  



 みぞれが降りかけた真っ黒な空の端に、にい、と笑う口が見える。

 朱色よりも濃い、真紅よりも澱んだ色合いのルージュを引いた、それは横倒しの三日月。

 4時間以上前に沈んだはずの夕陽が照り返しているとも思えないが、だからといって、では何に由来してああも毒々しいのかは解らない。

 道を横切る間、ずっと横目でそれを追った。

 ここは高台で、おまけに民家も店もさっぱり無いから、おそらく下ではもうとっくに沈んでいるだろう月が見えるし、その弱々しい赤光が夜景で途切れることも無い。

 黒雲がぞわぞわとその唇を這い登っていく様が見える。

 未亡人のショールを思わせるそれは、逆に艶やかさを縁取って、貞節を失わせていくようだ。

 それは隠す為ではない。剥ぐことを誘う為のベールだ。

 彼らが沈んでいく先は夜なのか、朝なのか。

 常に昼間に姿を見せる太陽は、沈んだその先の時間軸を夜へと引き継がせるだけの力を持っている。

 だがその形によっては宵の口すら拝まぬままに、建造物の影へと姿を消すのが月だ。

 今は嗤っている。

 夜に引き倒され、黒雲が覆い被り、この高台のみを客席として。

 春画のような韓紅。

「知ってる?」

「知らねー」

「聞けよ」

「何よ」

「低い位置にある月が赤く見えるのって地上のスモッグのせいなんだって」

「ふーん」

「でも結構キレイじゃね?」

 夜空の片隅にくっきり引かれたルージュを辿るように伸ばす指と吐き出される息と今にも降り落ちてきそうな色彩は夜の名の下では全てが同色だ。

 曰く、白。

「じゃあ買ってやろーか」

「何を」

「あんなカンジの口紅」

 見るのも人なら感じるのも人だ。生み出した原因は人であるべきなのか。

 韓紅の高貴を娼婦にまで貶めるのもまた人だ。

 排気ガスの穢れが早々に月を沈める美しさを与えているのなら、それに関与する全ての人がこの微嗤を目にしてしかるべきだろうに。

 それとも、この場にいて眺めることが月にとっては陵辱なのだろうか。

「キレイか?」

「お前が言ったんだろ」

「いやアンタキレイって言ってないし」

「じゃあ言ったら」

 穢れを魅力とするならばその言動には責任を持つべきなのだろう。

 もしそれがあの沈み行く歪んだ唇に聞こえていないのだとしても。

 毒々しく妖艶に嗤う、それを創造してしまったなら。

 スモッグより黒雲より確実に剥ぎ取れないだけの強固で脆弱なあの色彩に相応しいだけのベールを与えて、沈み行く様さえ他の何者にも感じさせないようにするだろう。

 辿る唇と冷たい質感。

 塗るのは夜ではなく。

 引き倒された体温と、しびれて落ちるみぞれ。

 韓紅を冬夜に抱く。











 ……色気があるんだかどうなんだか。

 誰とか何とか決めてませんけど。

 なんか、口紅の宣伝みたいだ……(笑)
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