白金の至福

　　　

　ああ、幸福すぎて他に何も要らない。

　いっそこのまま死ねたらいいのに、なんて、そんなことを思う日がくるとは思わなかった。

　言葉を、

　掛けずに済んだのは、奇跡に近い。

　確認など必要無い。思い込みでも構わない、あの小さな煌きだけで充分だ。

　こころを、挫くのに充分だ。

　古代ギリシアの伝承など、そんなものクソくらえだ大嘘つきめ。

　支配されたのは私の方じゃないか。

　切ない、醜い、浅ましい、救いようの無い、それでもこれが結果で。

　いつまた会えるか、それだけを頼りに生きてきたようなものなのに。

　まさか、もう会わずに死にたいと思う日が来るなんて。

　これ以上の幸福なんて無い、そんなことは無いだろう。でも。

　今まで生きてきた中で、これほど幸福だったことは無い。

　見たい。

　もう一度見たい。

　またそうやって生きていくんだろう。

　いつか見出せなくなるまで。見出せなくなったら、見出すためにまた、自分は。

　もう、涙すら出ない。